喫茶からスナックへ、歩数計がつなぐ北区コミュニティ

― 大曽根に見る“習慣”が生む店舗価値 ―

名古屋市内で事業用物件を仲介していると、
「立地がいい」「賃料が手頃」「広さがちょうどいい」
という条件面の話を日々扱います。

ただ、現場で本当に勉強になるのは、
条件以上に“人が集まる理由”を持っている店に出会ったときです。

大曽根周辺で食事をした後、二次会で立ち寄ったのが
喫茶はじまりさん。

昼は喫茶、夜はスナック。
時間帯で顔を変える二毛作型の営業スタイルです。

業態転換自体は珍しくありませんが、
このお店が印象的だったのは、そこにある“文化”でした。


歩数計がつくる会話

店内には一冊のノートがあり、
常連の方々が日々の“歩数”を記録しています。

「今日は1万歩いった」
「昨日より増えた」

そんな会話が、カウンター越しに自然と生まれる。

飲食店でありながら、
話題の中心は“どれだけ飲んだか”ではなく、
“どれだけ歩いたか”。

一見、相反するようにも見える
「お酒」と「健康」。

それが同じ空間で違和感なく共存している。

この掛け合わせが、実に巧みです。


店舗が“習慣の場”になる強さ

店舗経営の視点で見ると、ここが本質です。

人が集まる理由が、
単なる飲食消費ではなく
習慣や価値観の共有になっている。

歩数を記録するという小さな行為が、
再来店の動機になります。

・今日は記録を更新したい
・あの人に会って報告したい
・ノートに名前を書きたい

この“行動の理由”がある店は強い。

多少価格が高くても、
多少立地が奥まっていても、
「行く理由」が明確だからです。

これは広告では作れません。
日々の積み重ねからしか生まれない価値です。


イベントが新規導線をつくる

さらに同店では、音楽イベントや小規模なワークショップも開催されているとのこと。

常連の歩数コミュニティだけでなく、
別の切り口からも人が流入する設計になっています。

これは店舗ビジネスとして非常に理にかなっています。

既存顧客の“深さ”を維持しながら、
新規客の“入口”も用意する。

この二層構造があると、
店は安定します。


商店街の夜に感じたエネルギー

今回訪れたのは20時頃。
場所は名古屋市北区の大曽根商店街西側エリア。

平日の夜にも関わらず、
周辺店舗にも一定の人の流れがありました。

一店舗の取り組みだけでなく、
エリア全体に“夜の滞在価値”が生まれている。

商店街という集合体は、
個店同士が無意識のうちに影響を与え合います。

一軒の工夫が、
通行量を増やし、
回遊を生み、
結果として周辺物件の価値にも波及する。

これは仲介の立場から見ても、非常に重要なポイントです。


物件選びの前に考えるべきこと

出店相談を受ける際、たまに私は必ずこう問いかけます。

「その店に、通い続ける理由はありますか?」

味や価格は前提条件です。
しかし、それだけでは価格競争に巻き込まれやすい。

今回のように、
歩数計という“行動”を軸にした仕掛けがあると、
店は単なる飲食空間を超えます。

場所が、人をつなぐ装置になる。

これは、物件条件以上に強い差別化です。


最後に

大曽根での出店を検討している方、
あるいは既存店舗の集客に悩んでいる方。

一度、エリアを歩きながら
「人が集まる理由」を観察してみてください。

物件は箱に過ぎません。
価値を決めるのは、中で育つ文化です。

私達は、単に物件を仲介するのではなく、
その先にある事業の継続性まで見据えて提案しています。

地域の中で続く店を、一緒につくっていきましょう。