2026年を見据えた店舗経営と物件選び― 数字と構造から考える事業用不動産の判断軸 ―
2025年も終わりを迎え、店舗経営を取り巻く環境は明確に変化しました。
金利水準、建築費、内装コスト、人件費、エネルギーコスト。
いずれも一時的な上昇ではなく、構造的に高止まりする前提で経営判断を求められる局面に入っています。
このような状況下で、店舗経営者が最初に見直すべきなのが
「物件選びの考え方」です。
立地は“集客の期待値”ではなく“経営条件”として考える
従来の物件選定では、
・駅距離
・通行量
・視認性
といった要素が重視されてきました。
しかし2026年に向けては、
これらを単独で評価すること自体がリスクになりつつあります。
重要なのは以下の点です。
・そのエリアで同業種が何年継続しているか
・撤退が多い業態は何か
・平日と休日で利用者層がどの程度変わるか
・昼夜で需要が分断されていないか
これらは数値だけでなく、過去の出店履歴や入替状況を確認することで判断できます。
私達が現場で確認しているのは「出店しやすい立地」ではなく
「撤退しにくい条件が揃っているか」です。
初期投資は「削る」のではなく「固定化させない」
2025年に成約・開業した案件を分析すると、結果が安定している店舗には共通点があります。
それは、
初期段階で固定費を確定させ過ぎていないという点です。
・居抜き設備を活用
・内装は最小限
・必要に応じて段階的に投資
この進め方は、単なる節約ではありません。
売上が確定しない段階で
設備・面積・人員を固定化しないことが、2026年以降の経営において重要になります。
面積は「余裕」ではなく「負担」として計算する
広い店舗=有利、という考え方は既に通用しません。
・清掃時間
・光熱費
・人員配置
・管理コスト
これらはすべて面積に比例します。
特に小規模〜中規模事業者においては、
使い切れない面積はそのまま利益圧迫要因になります。
今後の物件選びでは、
・現在の運営に必要な面積
・将来的な拡張余地
・分割や用途変更の可否
この3点を事前に整理する必要があります。
情報発信は施策ではなく前提条件
Googleマップ、検索結果、写真、基本情報。
これらは「やると効果が出る」ものではありません。
整っていなければ検討対象にすら入らない条件です。
物件選定の段階で、
・所在地が検索行動と一致しているか
・業態と周辺検索ワードにズレがないか
ここまで確認できていないと、
立地条件を正しく活かすことはできません。
地域分析は“今”より“過去”を見る
地域を見る際、現在の人口や開発計画だけを見るのは不十分です。
重要なのは、
・過去に何が続いてきたか
・どの業態が定着しているか
・短期間で撤退を繰り返している区画はどこか
これらを把握することで、そのエリアに無理のない業態規模が見えてきます。
2026年の店舗経営に必要な視点
今後求められるのは、
・立地を期待ではなく制約として理解する
・初期段階で決めすぎない
・変更できる余地を残す
この考え方です。
大きな成功よりも、
継続できる状態をつくることが優先される時代です。
最後に
店舗経営において、
最初の物件選びは後戻りがききません。
私達は今後も、
条件・数字・過去事例をもとに、
実務として成立する判断材料を提供していきます。
2026年に向けて、事業用物件を検討される方にとって、
本記事が一つの基準になれば幸いです。

