その物件、あなたの事業に“似合って”ますか? ――成功する経営者の物件選びに共通する「3つの視点」

■ はじめに

私たちはこれまで、数百件に及ぶ開業・移転をサポートしてきました。
美容室、飲食店、クリニック、オフィス、スクールなど、業種はさまざま。

その中で、「この人はうまくいくな」と感じた方には、
例外なく共通している“物件を見る目”があります。

今日は、その「成功する経営者が持つ3つの視点」について、
リアルな事例とともにお話しします。


■ 結論:「独自の軸」「柔軟性」「未来視点」が鍵

結論から言えば、うまくいく経営者の物件選びには3つの共通点があります。

  1. 立地を“自分軸”で判断している

  2. 初期投資をコントロールできている

  3. 未来を見据えて選んでいる

これらは、単なる“条件の良い物件選び”ではありません。
むしろ、事業戦略そのものを空間に落とし込んでいるとも言えます。


■ ①「立地を“自分軸”で見る」──人気エリアに惑わされない

よくあるのが、「人通りが多い=売上が上がる」という誤解です。
確かに立地は重要ですが、**“自分のビジネスにとって良い立地かどうか”**は別問題です。

たとえば、久屋大通や栄のような繁華街。
昼と夜では歩く人の層がまったく違います。

ランチ需要を狙うカフェなら昼間のオフィスワーカーが重要。
逆にバー業態なら夜の動線がカギ。

でも、これを見誤ると、どんなに賃料を抑えても集客は安定しません。

成功している経営者は、単に「駅近だから」「人が多いから」では動かない。
むしろ、街のリズム・時間帯・顧客層を“読んで”判断しているんです。

彼らはこう言います。

「この通りは17時以降、人が減るからランチ中心で考えよう」
「この路地は女性客が多い。だったら内装の世界観を合わせよう」

つまり、“街の中での自分の立ち位置”を正しくデザインしている。
この視点があるかないかで、店舗運営の成否は大きく変わります。


■ ②「初期投資のコントロール」──コスト配分が経営センスを映す

開業や移転時に失敗しやすいポイントが、初期投資の見通しの甘さです。

「賃料を抑えたい!」と意気込んで安い物件を契約しても、
実際には内装工事・設備・看板・消防対応などで想定外の出費が発生することがあります。

一方、成功する経営者は、

「ここはお金をかける」「ここは抑える」
というコストの呼吸ができている。

たとえば、

  • フリーレント(家賃無料期間)を交渉して資金繰りを整える

  • 居抜き物件を活用して内装費を抑える

  • 広告費を削り、その分をスタッフ育成に回す

こうした“配分の巧さ”が、開業初期のキャッシュフローを安定させます。

資金繰りが整っている経営者ほど、判断に余裕があります。
そして、余裕がある人ほど、ビジネスが長く続く。

不動産選びにおいても、「数字の見える化」ができる人が強い。
感情ではなく、数字と戦略で物件を選ぶ
それが、本当の意味での「経営者の目線」です。


■ ③「未来を見る力」──3年後の成長に耐えられるか?

3つ目の共通点は、未来を見る目です。

多くの方が「今の売上」「今の家賃」で判断しがちですが、
成功している経営者は常に3年後・5年後を見ています。

「スタッフが増えたらこのスペースで足りるか?」
「厨房や設備を増設できるか?」
「この建物の管理体制は長期的に安心できるか?」

短期的な“今”ではなく、
“事業の成長とともに進化できる器”かどうかを見ています。

物件は“固定資産”ではなく、“可変資産”です。
どんなに完璧な立地でも、成長に追いつけなければボトルネックになります。

「今にちょうどいい」よりも、「これからの成長に余白がある」。
そんな物件こそ、経営者にとって最良のパートナーです。


■ 例え話:「物件選び=新メニュー開発」

物件選びって、実は飲食店の「新メニュー開発」に似ているんです。

たとえば、
「見た目が映えるから」「流行っているから」と安易に取り入れた新メニュー。
結果は──

  • 原価が高くて利益が出ない

  • 仕込みが複雑でオペレーションが崩れる

  • 客層に合わずリピートが伸びない

こうなってしまうこと、ありますよね。

逆に、自店の客層・回転率・スタッフのスキルまで計算して開発したメニューは、
長く愛され、利益も安定します。

物件も同じ。
「おしゃれ」「駅近」など“見た目”だけで決めると、
事業との相性が悪く、後々の運営が苦しくなる。

大切なのは、“その場所が自分の事業にフィットしているか”。
つまり、**“似合っているか”**なんです。


■ 「良い物件は探すものではなく、準備して迎えるもの」

ここでよく聞かれるのが、
「じゃあ、どうすれば“良い物件”に出会えるの?」という質問です。

答えはシンプルで、

「良い物件は“探す”ものではなく、“迎え入れる準備をする”もの」

私たちは、普段から経営者のビジョンや条件をヒアリングして、
「この人にはこういう街・サイズ感・家賃帯が合う」という情報を整理しています。

そして、マッチする物件が市場に出た瞬間にご紹介する。
実際、良い物件は“情報が表に出る前”に決まるケースが多いです。

つまり、事前に準備している経営者が勝つ
不動産市場も経営も、スピードが勝負です。

「待っている人」と「動いている人」で、結果の差は確実に開きます。


■ まとめ:「物件選び=経営判断」

最後に、今日の話を整理しましょう。

成功する経営者の物件選びには、3つの軸があります。

  1. 立地を“自分軸”で判断する
     → 街の流れを読み、自分の事業に合うかで決める。

  2. 初期投資をコントロールする
     → コスト配分をデザインし、資金繰りを安定させる。

  3. 未来を見据える
     → 成長に耐えられる器かを判断し、余白を持つ。

この3つの視点を持つだけで、物件選びの精度は一気に上がります。

物件選びとは、単なる“場所探し”ではありません。
「自分の事業の未来をどこで咲かせるか」を決める経営判断です。